猫っ毛のスーツ

いくぜ!おっさんの向こう側へ!

PBR case2 ride

心地よい振動に目が覚めた。
いつの間に眠ってしまったのか…
…眠ってしまった?

 

 

-----ガタン-------ガタンー-ガッタン-----

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(…どういうこと?)
頭の中はそれだけだった。
ひたすらに浮かぶ疑問符。

どうやってここまで来たんだったか?
なんでこんなとこにいるのか?
そもそもここはどこなのか?

 

わかるのはここが多分電車の中だということだけ。


窓の外はよく見えない。
ガラスが曇っているのか、霧がかかっているのか
それとも眩しいのか、暗いのか
自分でも何を言ってるのかよくわからない。
よくわからないが、事実外が見えないのだ。


どの路線なのだろう?
電光表示もない

中吊りには有名な絵画だろうか?意味不明な絵がちらほらと。

壁も床も一面真っ青で
シートはびっくりするほどフカフカある。

 

乗客は向かいに座っている小奇麗な女性が一人。
他に人の気配はない。


とりあえず自分がどこに向かっているのかを知りたかった。
どう思われるかわかったもんじゃないが…勇気を出して目の前の女性に聞いてみる。

 

「すいません、この電車どこ行きでしょうか」

 

女性は表情を変えずに答える

「さぁ…?私にもわからない」

これは予想外。
まじかよ。


「…わからないのに乗ってるの?」
「そっくりそのままお返しするわ」


その女性は少し微笑みながらそう答えたので
つられるように(あと照れ隠しで)愛想笑いをした。


ごもっともです…

バフっと音を立てて元の位置に座る。

 

すると女性が呟いた
「でも停車駅はもうすぐ…」


ん?
やっぱ何か知ってる?

 

「停まるの?なんて駅?」

「さあ…?」
また微笑んでそんなことを言ってくれる。

 

…もしかしたらバカにされているのかもしれない。
なんだか気分が悪くなってきた。
そんなことを考え始めていた。


その時だった

「次に停まるのはあなたの始まり。
終点、それはあなたが決めること。
今は気にしなくてもいずれ辿り着く場所。」


…?

 

わけがわからないはずだった

でも、わかる、気がした

 

「あなた、お名前は?」



名乗った。


この女性が僕に好意を持っているとか、そんなことを考えたわけではない


この出会いが、決まっていたような気がして

 

 

 


「ありがとう…ここで名前を応えられる人は多くないの。」

 

体が揺れる


「また、会いましょう」


微笑みと同時に


ドアが開いた